- これは、女教皇が主軸の話。
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冷たい目線で女教皇はドレスを一つ一つ見ていた。普段の女教皇ならば、どれでも構わないと言うところだが、今日は違った。鏡の前で自分を見つめる彼女の姿は、どこか揺らいでいる。ドレス選びに迷っているなんて、珍しいことだった。
女教皇「……」
魔術師「おや。珍しく迷ってますね」
魔術師が軽い口調で話しかけた。彼は知識豊富で、いつも冷静な態度を崩さない。その魔術師が、女教皇の隣に立ち、ドレスを眺めた。
女教皇は一瞬で目を逸らし、またため息をつく。
女教皇「どうでもいいことよ」
魔術師「どうでもいいことに、これほど真剣になるのは、あなたらしくないですね」
女教皇「……」
魔術師「彼の好みの色は?」
女教皇「…別に恋じゃないわ」
魔術師「そうですか」
女教皇は微かに顔を赤らめる。魔術師は笑みを浮かべながら、女教皇を鏡の前に導いた。そして、持っていた杖を軽やかに動かす。
魔術師「へえ。女教皇の初恋は彼ですか」
女教皇「だから違うって言ってるのよ」
魔術師「ほう…。彼、白色が好きなようですね」
女教皇は黙って様々な色のドレスを物色し始めた。赤、青、緑…どれも目に留まることなく、最後に手に取ったのは白色のドレスだった。
魔術師「おやおや。それじゃあウェディングドレスですね」
女教皇「なっ!?」
魔術師「少し気が早いのでは?」
魔術師はにやにやとしながら、女教皇を見た。
女教皇は行き場のない気持ちを抱えたまま、顔を真っ赤に染めた。心の中で、自分の感情を整理しようとしたが、魔術師の言葉が耳に残り続けた。恋じゃないと言い聞かせながらも、白色のドレスが手から離れない。
魔術師は静かに見守りながら、女教皇の心の揺れ動きを感じ取っていた。
魔術師「本当に、その人のために選んでいるんですか?」
魔術師は少し真剣な表情で尋ねた。女教皇は一瞬黙り込んだが、やがて意を決して口を開いた。
女教皇「…彼は特別なの。だから、彼のために一番良いものを選びたいだけ」
魔術師「……」
魔術師「それなら、なおさら素直になったほうがいいですね」
女教皇「素直になれたら、こんなに悩んでいないわ」
魔術師「確かに」
魔術師は静かに頷いた。「でも、あなたがそのドレスを選んだ理由はきっと、その人にも伝わるはずです。」女教皇は、その言葉に心が少し軽くなったような気がした。白いドレスをもう一度見つめ、深呼吸をする。
女教皇「…ありがとう、魔術師。あなたのおかげで少し楽になったわ」
魔術師「どういたしまして」
魔術師は優しく微笑んだ。女教皇はドレスをしっかりと握りしめ、心の中で決意を固めた。恋とは認めたくなかったが、その気持ちが自分にとってどれほど大切か、少しずつ理解し始める。
女教皇「…あの人、喜んでくれるかしら」
〈終〉
今作は、女教皇の恋を魔術師が応援するという世界線。