『旅にでないで』女教皇と愚か者

タロット劇場
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女教皇「ねえ。本当に行ってしまうのですか?」
愚か者「うん。もう決めたことだからね」


愚か者はフォークを手に取り、の一口サイズを口に運んだ。あまりにも美味しかったのか、すぐにもう一口。更にもう一口と、口へ運ぶ。


女教皇「あなたは世間知らずです」
愚か者「えー?急にどうしたの?」
女教皇「ここにいれば何も困らないはず…」
愚か者「まーそうだね」
女教皇「それなのに…どうして旅へ出るのですか?」


すると、愚か者は私に微笑みかけ、美味しいケーキを一口頬張りながら言った。


愚か者「女皇帝も旅に出てみる?」


全くで理解できない私は、愚か者を冷静な眼差しで見つめ「ここから出て冒険するなんて馬鹿げてるわ」と言ったが、愚か者は微笑みを浮かべて立ち上がり、旅の支度をした。


愚か者「じゃあ、もう行くね」


愚か者の背中には小さなカバンただ一つ。そんな小さなカバン一つで、危機が迫った時はどう対処するのか。もしかすると、愚か者は何も考えていないかもしれない。友人として止めるべきなんだろうか。

心配する私を他所に愚か者は言った。


愚か者「また戻ってきたら、今日食べたケーキをもう一度作ってよ」


なんとなく。

なんとなくだけど、これが最後の別れのように感じた。悪い直感なのか、それとも私のわがままなのか。考えても分からない。冷静に判断出来ない。


愚か者「


私がぐだぐだしている間に、愚か者は旅へ出る為にのんびりと歩き始めた。


結局。私は、愚か者になにも言葉を返せなかった。ただただ、愚か者の背中が見えなくなるまで、外を眺める。


女教皇「


私はポツリと呟いた後、もう冷め切った紅茶を一口飲んだ。


〈終〉

今作は、女皇帝の唯一の友人である愚か者が危険な旅に出ようとする為、女皇帝がいつもの冷静さを失うという世界線。