『これが本当の、』愚か者と塔

タロット劇場
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愚か者「道に迷ってしまったな」
塔「おや。どこかへお出かけですか?」


誰かが愚か者に声をかけたが、周囲を見渡すと誰もいない。不思議そうにキョロキョロしていると、ふと一輪の花が彼の頬に触れた。彼が顔を上げると、木の上に塔がひっそりと座っているではないか。その光景はまるで夢のようだった。彼もまた、お昼寝をしていたのだろうか。


愚か者「いや、僕は旅をしているんだ。自分を探す旅!それでさ!ある場所に行きたいなーって思うんだけど、この地図の通りたどりつけなくて…」
塔「おかしな人」
愚か者「どーして?」
塔「せっかく旅に出たのに、地図というものに縛られて行動するんだ」
愚か者「たしかに!」
塔「たまには自分の足の進む方向に身を任せてみれば?」


愚か者はただ黙々と歩いていた。頭には何の考えもなく、ただ前へと足を進める。そして、彼がたどり着いた先には、甘い香りが漂っていた。イチゴのケーキからチーズケーキまで、まるで不思議な夢の中に迷い込んだかのような雰囲気が漂っていた。彼は自らがこの場所を求めていたのだろうか。その疑問が心をかすめる中、彼はひとまず一つの椅子に腰を下ろした。


塔「いらっしゃいませ。お客様」
愚か者「…なんだ君か」


先回りされていたのか、それとも導かれたのか、愚か者にはわからなかった。ただ、空腹と喉の渇きが彼の知性を徐々に侵食していく。このままでは彼の心も乾き果ててしまうのだろうか。


塔「まずはウェルカムドリンクを一杯どうぞ」
愚か者「!…ありがとう。ちょうど喉が渇いていたんだ」
塔「そう。おかわりもあるよ」


塔が微笑むと同時に、愚か者は洗練されたフレーバーティーをまるで水道水のように一気に飲み干した。その甘さが喉の渇きをより一層刺激し、愚か者は塔に水を求めるように要請した。


塔「お水かー。なんで必要なの?」
愚か者「なんでって…」
愚か者「あれ。なんでだっけ?」


塔はほくそ笑んで、「まあ、いいよ。水ぐらいお安いご用さ」と言いながら、コップに水を注いだ。愚か者はまるで水槽を眺めるかのように、水がコップに注がれる瞬間をじっと見つめていた。


愚か者「僕って誰だっけ。分からない。ここに何をしに来たんだっけ」
塔「何って君は旅をしているんだよ」
愚か者「なんのために?」
塔「自分を探すためにさ」


塔が愚か者の頭を触りながらそう言うと、愚か者はなにかを思い出したかのように椅子から立ち上がり、風呂敷にパンを詰め、勢いよくカバンを背負った。もはや彼を止めることは誰にも出来ない。


愚か者「ありがとう!その言葉を聞いたら、何故か自分のことを思い出せそうな気がしてきたよ」
塔「そう。それはよかった」


塔が注いだ水を飲まずに、愚か者は自らの足が導くままに歩き始めた。後ろを振り返ることもなく、地図を見ることもなかった。なぜなら、彼は自らを探しに旅立つのだからだ。そしてとうとう、愚か者は塔の視界から消えてしまった。塔はそれを気にも留めず、本来愚か者が飲むはずだった水を一気に飲み干した。


塔「お飾り程度の自分探しなんてつまらないだろ?本当の自分探しをするなら、過去のことは全てリセットしないとね」


〈終〉

今作は、愚か者が塔に記憶をリセットされるという世界線。